しまチャレ2023 ながさき「しま」のビジネスチャレンジ2023

輩インタビュー

輩インタビュー

しまの先輩ノート No.6

佐世保市(高島)
株式会社ACS
重村友介さん

島歴17年 水産業

生まれも育ちも異なる高島という地で、まったく経験のない事業を手掛けることになった重村さん。急逝された父の思いを受け継いで、島の方との信頼を築き上げつつ開発を進めた「長崎産天然クエ鍋セット」は、2万3千人のフードアナリストによる日本初の食品・食材の審査・認定制度である「ジャパン・フード・セレクション」において、最高賞の第58回グランプリに長崎県としては初めて選ばれるなどの結果に結びついています。今年(2023年)には新たに高島を活性化するため、産官学金民の団体も立ち上げた重村さんに、「しま」への思いを伺いました。

いろいろ聞きました

起業までの経歴を教えてください

生まれも育ちも岐阜県ですが、祖父も、父も高島の出身です。祖父は漁師で、3男であった父は島を出て岐阜県高山市の測量設計会社を起業しました。私も全く測量と違う分野を大学にて学びましたが、卒業後には測量士となり、父の仕事場で働き始めました。

島で起業することになった経緯はなんですか?

測量士となってから5年後の春、父から「事業の新しい一手として高島の魚を加工販売する事業を立ち上げたい」という相談を受けました。
物を売る商売、魚を売る商売、食品を売る商売含めて全くの専門外でしたし、私にとっては高島という地はなじみがありませんでしたが、「高島の水産物を発信して、島と漁師を盛り上げたい」という父の思いに打たれ、その年の秋に小さな加工場を作り、12月にネットショップ「よか魚ドットコム」を立ち上げ、高島にて水産部及びネット販売事業を開始しました。
小規模離島ならではのハンディキャップや様々な不測の事象もあり、一年間はまともに発送さえできない状況で、立ち上がりから非常に厳しいスタートとなりました。飛び込み営業や人員の整備なども行いながら色々と学ばせて頂きながら、一心不乱に動いている中で少しずつ可能性が見えてきた2年目冬、いつも前向きだった父が佐世保にて急逝。正直会社としてかなり厳しい状況までいっていた中、途方にくれる間もなく会社を引継ぎ、事業継続という選択をいたしました。「いつか故郷のための仕事をしたい」という父の思いを形にできるのはもう自分しかいませんでしたし、やりきる前に諦めるという選択はありませんでした。私は会社の代表となり、地元の漁師の奥様をスタッフとして、島の小さな加工場で鮮魚等メインの業態から様々な商品を開発を本格的に開始しました。

起業にあたり苦労したこと、これをしてよかったと思うことを教えてください

先のお話も含め、色々とありました、とだけ言わせてください(笑)。良かったこと、辛かったこと含めて、離島だからということでもない部分も多々あります。
水産部を立ち上げた当時は、代表となった後も、様々な人の力で育てていただき、何とかやってきたというのが実際です。
島での起業は苦労もあるかもしれませんが、むしろ良いところもたくさんあります。
海なし県の人間が、長崎で水産部をつくりここまで継続してこれたこと自体が奇跡かもしれません。関わってくれた人やスタッフがいたから継続してこれたと思います。共に働く人々との信頼関係は、一日では築けません。島の方々や子供たちからの「ありがとう」の一つ一つが自分の誇りですし、これまで力をくれた島の人たちが私の糧です。
離島だったから、高島だったから良かったと思っておりますし、成長させて頂いたと思います。そして、よかったことも苦労したことも積み重ねてきた今が私の財産ですし、今後の未来に向けてACSよか魚と九十九島高島をより良い形で次世代に繋げていけたらと思っております。

先輩起業者として、応募者にひと言お願いします!

生まれも育ちも違う私ですが、この高島は故郷と思っております。父の死後、ある種の反骨的な気持ちで夢中で走ってきました(笑)。スタッフやその家族をはじめとする、たくさんの人たちに支えられ、助けられる中で、高島も私の「ふるさと」となりました。
私を育てていただいたこの高島を「子どもたちが明るい未来を語れる元気な島」にしたい、「なんとかせんば」という想いから、産官学金民の新たな団体「一般社団法人 高島活性化コンベンション協会 ESPO」を今年5月に設立しました。「ESPO」は希望の造語です。インフラ、観光、産業、教育を柱として、地域商社の役割も兼ねたこの団体は私の新たなフィールドであり、志半ばで二度と会えなくなった仲間たち、そして父の想いが、自分の想いへと結実した結果です。
起業するにあたって、様々な業種、離島規模があるかと思いますが、人と人がつながることで起こるエネルギーは課題先進地の離島や過疎地でこそ如実に発揮されると思います。だからこそ、離島こそが「コト」を起こすべき場所であると感じております。
その上で、地域の歴史と文化と人を理解して新たな色(事業)を島に落としていくことが、その一歩だと確信しています。

重村さんの会社の

事業概要

1982年2月1日に、父がACSの前身の測量会社を設立しました。2007年水産部を設立して、高島の漁師から仕入れた魚の鮮魚販売を開始、その後に水産加工を主とする事業内容に変更し、様々な商品を開発及び展開しています。21年10月、離島初となる漁業特定用地の民間利用により、新たにHACCP認証水産工場を高島に竣工。島には6年前から商店がない状態であったため、22年6月に買物難民対策として島の唯一となる商店「A-SHOP」を工場内に設置して、酒類販売業なども始め、今に至ります。
  • 会社名
    株式会社ACS
  • 設立
    平成19年12月4日(水産部設立) 
  • 資本金
    1000万円
  • 従業員
    水産部(長崎・本社)25名(アルバイト・非常勤20名含む)
  • 所在地
    長崎県佐世保市高島町676-16(水産本部)
  • 資格等
    JFS-B
  • 主な事業
    水産物卸・加工・販売・酒類販売・直売所他
    測量業・土木設計・土木ICT関連事業・行政書士業務

重村さんが利用した
支援制度

advise 創業当時は支援制度は少なく、また存在する支援制度も岐阜本社のため使える環境にはありませんでした。使用経験はありませんが、現在は補助等が色々とあります。
補助は継続するものではありませんので、補助ありきではなく何が本当にしたいのか?を踏まえた使い方が重要だと思います。