しまチャレ2024 本審査会レポート(④各部門奨励賞受賞者インタビュー)
2024年12月7日(土)に長崎県庁にて開催した、「しまチャレ2024」の本審査会(プレゼンテーション審査)。今回は、一般部門、学生部門の部門奨励賞を受賞された方へのインタビューです。
【一般部門奨励賞】黒島ガストロノミーツーリヅム協議会さん
応募部門:一般部門
発表タイトル:
島ごとレストラン「ビストロ黒島」持続可能な黒島の未来へ
~歴史文化・環境と食をつなぐ、つながるプロジェクト~


・「しまチャレ」に応募された経緯を教えてください。
世界文化遺産「黒島の集落」を有する黒島は、世界遺産や日本遺産といった貴重な文化財の存在により一定の観光客が訪れています。しかし、世界遺産登録から5年以上が経過し、観光客数の伸びが停滞している状況です。
こうした中で、新たな黒島の魅力を再発見し、観光誘客を促進して地域活性化につなげるコンテンツを模索していたところ、「しまチャレ」の募集を知りました。
世界文化遺産だけではなく、黒島を訪れる新たな目的を創出し、黒島を知ってもらうきっかけを作り、訪れてもらいたいとの思いから、島ごとレストラン 「ビストロ黒島」というビジネス構想で応募しました。
・「しまチャレ2024」本審査会での発表はいかがでしたか?
5分間という限られたプレゼンテーション時間だったため、私たちは「ビストロ黒島」のわくわく感を伝えることを重視したプレゼンテーションにしようと考えました。その結果、プレゼンのスタイルとしては「ビストロ黒島」の支配人とコンシェルジュになりきり、お店を紹介するスタイルとしています。
一方で、「ビジネスプランとしての具体性」を十分にアピールすることができなかった点は課題として感じています。しかし、私たちのビジネスプランは、NPO法人黒島観光協会の収益だけを目的とするのではなく、地域全体にどのように経済効果をもたらすかを重視しています。この仕組みを事業化することで、黒島の観光ビジネスが持続可能なものになると考えています。
この想いを象徴するのが、「島ごとレストラン」というキーワードに込めた私たちのビジョンです。
・しまチャレに参加して、良かったと思うことはありますか?
発表者の皆さまが語る「しま」への熱い思いや、それぞれのビジネスプランはとても参考になりました。同じく島の活性化を目指す方々や審査員の皆さまと交流する機会にも恵まれ、大変貴重な経験となりました。これからも横のつながりを大切にし、交流を深めていければと思います。
・アイデアの実現に向けた今後のご活動についてお聞かせください。
事業実現に向けて、佐世保観光コンベンション協会や行政と連携しながら、まずは実証実験を通じて課題を洗い出し、改善を重ねながら商品化を目指します。条件不利地域である離島という特性を活かし、黒島だからこそ提供できる特別な体験を創り出すストーリーを重視します。
「歴史文化・環境と食をつなぐガストロノミーツーリズム ~島ごとレストラン『ビストロ黒島』~」のオープンを一つの目標としつつ、それを事業のスタート地点と捉え、さらに先の未来を見据えた取り組みを進めていきたいと考えています。
【一般部門奨励賞】株式会社BooST 代表取締役 畠山 拓巳さん
応募部門:一般部門
発表タイトル:
「住み慣れた家で生活をしたい」離島の高齢者を支援!
“家での生活に必要なサービスや情報をワンストップで提供”


・「しまチャレ」に応募された経緯を教えてください。
私は、理学療法士として在宅医療に携わっています。離島は様々な資本が不足しています。医療・介護職だけで地域の高齢者や障がい者を支えることは到底不可能です。しかし、地域の繋がりが重要であると謳っておきながら、地域包括ケアシステムの図中では、未だに医療・介護職だけで解決しようとする傾向やバイアスから脱却できていません。現代は複数の生活習慣病を発症しながら生活をしている高齢者や障がい者が増加しており、悩みのニーズは多様化しています。
そのニーズを解決するためには、我々の力だけでは不十分です。しかし、医療・介護保険内で提供できるサービスが中心となるため、視野が狭くなることも理解できます。そのため、様々なアイディアを持った方々が集まるしまチャレにヒントがあると思い、参加を決意しました。知人であるRural Careの和氣幸佑さんの前回大会の活躍もあり、この流れに続きたいという想いもありました。
・「しまチャレ2024」本審査会での発表はいかがでしたか?
5分という限られた時間の中で、構想している内容を全て伝えることは不可能でした(笑)。当日はとても緊張したことを覚えています。練習の成果を十分に発揮できなかったことや、審査員の方々の質問にスムーズに答えられなかったことは悔しかったです。
しかし、構想を何度も修正したり、想定される質問への対策などをしているうちに頭の中がクリアになっていきました。審査員の方々からのご指摘には全力で改善しようと思っています。私は3年前に起業することを決意しました。当時は漠然としたアイディアしかなく、路頭に迷っていました。
そのような悲惨な状態から1つの形にして皆様の前で発表ができたことには自分で成長を感じています。ここに至るまでに多くの方々のサポートを受けました。奨励賞の受賞はひとえに私だけの力ではないと感じています。この経験を糧にたゆまぬ努力を続けていきたいと思っています。
・しまチャレに参加して、良かったと思うことはありますか?
私は、福江島で生まれ育ち、現在も福江島を活動の拠点としています。今後もずっと拠点を変えることなく事業を継続したいと思っています。
当日は17組の発表を聞きました。各々が置かれている環境の中で見つけた課題、それを解決するアイディアには、すごく感動しました。私は、理学療法士なので、どうしても医療や介護の視座に偏ってしまいます。今回のコンテストでは、様々な取り組みを知る機会となりました。
しかし、共通してあることは「離島への愛情」だと感じました。そのような方々と繋がれたことはしまチャレに参加して最も良かったと思う点です。この人脈を活かし、高齢者や障がい者の多様化する悩みを解決することも可能だと思っています。また、私は福江島以外の離島にも事業を展開したいと考えているので、その地域の実情に合ったサービスを提供していきたいと考えています。
・アイデアの実現に向けた今後のご活動についてお聞かせください。
私は、離島の人口減少には歯止めが効かないと思っています。福江島の限られた人材の雇用合戦を繰り広げられる時代は終わり、全国に離島の実情を発信し、本土の方々に一部の業務を委託することで、リソースが得られ、関係人口が増加すると考えています。
離島こそ最先端である必要があります。5Gの技術が発展し、AIやメタバースの利用が当たり前になる時代は間近に迫っています。場所や場所に縛られない働き方が実現でき、多拠点生活に対するハードルは低くなると予想しています。関係人口の増加は離島の未来を救います。
令和7年は自ら離島の魅力を発信し、同時に雇用の創出を行うことが目標です。医療・介護保険では取り扱わないサービスに取り組むことで、産業は創出されます。私は、医療機関と企業どちらの気持ちも理解できます。両者の架け橋となるには最適な人材だと感じています。そして、最終的に多職種が手軽に連携できるプラットフォームを構築したいです。
【学生部門奨励賞】九州大学共創学部 チームりとまる 宮崎幸汰さん
応募部門:学生部門
発表タイトル:
久賀島浜脇集落エリア利活用プロジェクト
~久賀島を教会巡りの拠点に~


・「しまチャレ」に応募された経緯を教えてください。
宿泊施設のプロジェクトに参加しました。この経験を通じて、地域の観光業が持つ可能性や課題に触れ、自分のアイデアで何か貢献したいと考えるようになりました。「しまチャレ」を知った際、自分の経験や考えを形にし、多くの人と共有する絶好の機会だと感じました。
また、この応募を通じて、島の未来を考え行動する仲間と出会い、学ぶ場を得たいという想いもありました。しまチャレは、私の考えをより具体化し、現実的なプランに発展させるきっかけとなると考えています。
・「しまチャレ2024」本審査会での発表はいかがでしたか?
本審査会は、私にとって大変貴重な経験でした。審査員の方々からは、プランの独自性や実現可能性に関する具体的で鋭い指摘をいただき、現在のアイデアをより深める必要があることを実感しました。
特に、「地元住民との連携をどう強化するか」「観光客が地元にどのように関与できるか」といった点について多くの示唆を得ることができました。また、発表中の質問を通じて、今まで想定していなかった視点や可能性にも気づくことができました。
一方で、自分の考えが評価された場面もあり、大きな自信にも繋がりました。この審査会を通じて、アイデアの実現に向けて具体的な改善点を明確にすることができたと同時に、次のステップに進むための指針を得ることができました。
・しまチャレに参加して、良かったと思うことはありますか?
しまチャレへの参加を通じて得られた最大の成果は、「新たなつながりと学び」です。同じく地域や離島に情熱を持つ発表者たちとの交流を通じて、それぞれの視点や取り組みに触れ、多くの刺激を受けました。
特に、離島が抱える課題に対する多様なアプローチを学ぶことで、自分の考えにも新たな視点が加わりました。
また、審査員の山下賢太さんとの交流を通じて甑島を訪問する約束をしたことも、今後の活動に繋がる貴重な一歩となりました。さらに、審査員や参加者同士での意見交換を通じて、自分のプランを見直す機会が得られたことも非常に有意義でした。
・アイデアの実現に向けた今後のご活動についてお聞かせください。
私のアイデアを実現するためには、社会人として必要な知識やスキルを一つずつ学んでいくことが重要だと考えています。特に、不動産や金融の分野について深く学ぶことで、地域の資源を効果的に活用する方法を身につけたいと思っています。
また、観光やビジネス全般に関する実務経験を積むことも目標です。実際に現場で働きながら、先輩方から知識やノウハウを吸収し、自分の視野を広げていきたいです。さらに、地元住民との連携を深めるコミュニケーションスキルや、プロジェクトを形にする実践的なスキルも磨いていく予定です。
こうした経験を通じて、地元の観光やビジネスを活性化させる仕組みを構築し、五島の魅力を国内外に伝える取り組みを進めていきます。一歩ずつ、着実にアイデアの実現に向けて前進していきたいです。
【学生部門奨励賞】広島叡智学園高等学校 KTT PROJECTSさん
応募部門:学生部門
発表タイトル: 事業所クーポン循環サービス「アイクル」


・「しまチャレ」に応募された経緯を教えてください。
私たちは、少子高齢化や人口減少といった問題を抱えた、広島県の大崎上島という離島で学校生活を送っています。このような環境で、私たちはコミュニティーサイトや職業研修のスケジューラー等、島内の人々の交流の活性化を目的としたローカルな視点からのアプリケーション開発を行ってきました。その経験を活かし、ボランティアを軸とした地域経済の活性化を事業として展開したいと考えていました。
・「しまチャレ2024」本審査会での発表はいかがでしたか?
広島県の離島からの参加で、移動や宿泊などさまざまな困難がありましたが、最後まで準備を重ねて自分たちなりの発表をすることができました。また、本審査会では緊張で練習通りの発表はなかなか難しく、鋭い質問や指摘に上手く対応しきれない場面もありましたが、いい刺激になり、今後の活動に繋げていけるいいきっかけになったと思います。
・しまチャレに参加して、良かったと思うことはありますか?
しまチャレに参加し、さまざまな地域、立場の人たちの意見を知ることでビジネスに対するイメージや参考になるアイデアをもらうことができました。私たちよりも年上の方々が多く、本当に良い刺激になりました。審査員の方々からのアドバイスや指摘、本審査後の交流会まで全て本当に良い経験であったと思います。
・アイデアの実現に向けた今後のご活動についてお聞かせください。
今後はさらにさまざまな活動に取り組み、アイデアの実現に向けてスキルを磨き続けたいと考えています。受験などで忙しく、すぐに実現することは難しいと思いますが、今後もチームで話し合いを重ね、いつか実現することができるように日々頑張りたいと思います。
次回は、特別賞受賞者ほか、本審査会に進出された方々のインタビューを掲載します。