第3回プレイベント実施レポート
皆さんこんにちは!
しまチャレ2023事務局です。
しまチャレ本番に向けたプレイベントの第3回を11月18日(土)に池袋のリアル会場とオンライン、壱岐島のサテライト会場のハイブリッドで開催し、これまでの2回を上回るたくさんの方にご参加いただきました。
第3回目のテーマは「ビジネスチャレンジにとって『しま』の可能性とは」
今回は、壱岐島でクラフトビール造りを行っている原田知征さん、佐世保市高島で水産加工や観光事業に取り組む重村友介さん、お二人の先輩事業者にご登壇いただきました。
原田さんは壱岐島の出身で、Uターンし事業展開されているのに対し、重村さんは岐阜県高山市出身で、父親の出身地である佐世保市高島に通いながら事業展開されています。
お二人に、事業を始めたきっかけ、その想いについてお話を伺いました。
ビールがあれば、もっと楽しい島になると思った
壱岐島で生まれ、島外の大学へ進学してお酒造りを学んだ後、家業を継いで日本酒と焼酎造りをしていた原田さん。クラフトビールを作ろうと決意したのは、壱岐島をより楽しくするため、とのこと。壱岐島は福岡からジェットフォイルで約1時間と近く、日帰り観光ができてしまいます。あと数か所立ち寄る箇所があれば、もっと長く島に滞在してもらうことができ、旅行会社のツアーや宿泊旅行も増え、島の観光が盛り上がるとの考えから、これまでに無い滞在要素の1つとしてクラフトビールがいいのでは、と思いついたそうです。
また、海外との交流で栄えてきた歴史を持つ長崎県に、クラフトビールをつくるブルワリーが(当時)なく、自分の醸造技術で作れたらユニークなものになると考えたことも、クラフトビール造りの理由となりました。
ビール造りにあたっては、後発だからこそ、しっかりコンセプトを決めようと考え、「魚を食べるなら。ISLAND BREWERY」というコンセプトを立ち上げました。ビールの原材料には島内のものを一部使っているほか、グラスは島のデザイナーさんに依頼するなど、地域とともに、という姿勢を大切にされています。ロゴマークは、地元で盛んなイカ釣り漁から発想し、海を明るく照らす集魚灯をモチーフとするもので、原田さんの思いが込められています。
「明かりを灯し続けることが僕の中の使命になっている」という原田さん。島の方々の交流の場になるようにと、造りたてのビールが味わえるTapRoomを醸造所に併設し、年中無休で営業しているそうです。自身の持っている醸造技術を、島を楽しくするために活かすとともに、島の方々との関係性を大切にして事業を展開するなど、「三方良し」の事業をされているという印象を持ちました。
父親の想いを受け継ぎ、高島の活性化に取り組む
岐阜県高山市出身で、親子で測量の会社を営んでいた重村さん。佐世保市高島出身の父が、「自らのふるさとである高島の魚を販売するビジネスをやれないか」と考えたことがきっかけで、高島との関わりが始まります。
当時、重村さん自身は高島に対する格別の思い入れはなく、「父親がやりたいなら」ということから始まったビジネスでした。当初は、小規模離島であるハンディキャップや、様々な不測の事象への対応などに苦労したそうです。飛び込み営業や人員体制の整備などを行い、少しずつ希望が見えてきた頃、突然社長である父親が病気で亡くなってしまいます。高島と接点もなく、知り合いもいない状態で、また会社の経営も厳しい状況でしたが、事業を続けることを選択をします。会社の代表となった重村さんは、地元スタッフを雇用し、鮮魚や活魚を関東圏の飲食店やネットで販売する事業に加え、水産加工業にも取り組み、特に入口商材としてクエに注力した商品展開を行うようになります。
そのような中、あるとき、「本土でやったほうが効率が良いのに、この島で継続的にビジネスをやる意味は何なのか」を自分に問う機会があったと言います。自問自答のすえ、「高島が好きなんだ」ということを認識した重村さん。また、お世話になった方の家族が、漁師を継ぎたくても継げず島を離れる出来事があり、無力感を感じるとともに、「ビジネスだけでなく地域のことも考えなければならない」と気付きます。
そんな経験を経て、2021年に、高島にHACCP対応した新たな水産加工場を整備しました。加工場には日用品を扱う商店が併設されています。島からなくなってしまった商店を6年ぶりに復活させたのです。人が関わる「公」の場を作りたい、という重村さんの考えによるものでした。
こうした自社のビジネス展開を通じた地域の活性化とともに、新たに観光など地域ぐるみの取組による島の活性化を目指し、2023年に「高島活性化コンベンション協会ESPO(エスポ)」を立ち上げます。島民の方に理事に就任いただくなど、多くの島民にも参画いただきながら、地域課題の解決や地域の活性化に向けて取り組んでいます。
最初は高島に愛着がなかった重村さんが、ビジネスや地域活性化のフィールドとして活動を続けるうちに、高島のことがどんどん好きになり、島の方からも信頼され、使命感を感じていく姿に感動を覚えました。
儲けのためではなく、雇用を生むためのビジネス
原田さんのお話を伺う中で驚いたことは、「クラフトビール事業を立ち上げる時に、マーケットリサーチなど売上の試算をするのではなく、雇用を2人生むと決め、そこから逆算して事業規模を決めていった」ことです。
通常、事業計画を作成するときはマーケットリサーチなどを行い、生み出せる売上・利益を想定して、そこから設備投資、人件費などを考えるもの。先に雇用する人数を決めるのは、離島という環境だからこそ、単なるビジネスではなく、事業を通じて雇用を生んで地域に貢献するという意識の強さをと感じました。「高校を卒業すると島を離れるので、こどもたち(の世代)が戻ってこられる雇用の場を作るのも今の大人の役割」と話されており、未来を見据えた事業展開をされていると感動しました。
失敗を許容できる地域のあり方が大切
「新しい人が島でチャレンジをすれば失敗する可能性がある。そのときに、島が受け入れてあげること、サポートしてあげることが大切で、そのためには一緒に考えて伴走してあげる地域のあり方が大事」と話す重村さん。また、原田さんも「失敗は次につながるもの。失敗したら別のことをやろうと思っていた。それが地域のためになるならそれでいい」と話されています。
チャレンジする人が、失敗を失敗で終わらせないというマインドを持ち、そのチャレンジを地域が応援し、一緒に伴走することがとても大切なことだと感じました。
ご登壇いただいたお二人は、「ビジネスを通じて島をより良くする」というマインドを持ち、失敗を恐れずにチャレンジしていることが印象的でした。また、今の課題解決だけでなく、将来を見据えた島への関わり方をしているということも特徴的だったと思います。
プレイベント第3回のトークセッションは、ビジネスチャレンジとしてだけでなく、それを受け入れる地域としても、学びのある会だったと感じています。
しまチャレ2023のプレイベントはこれで終了となります。
「しま」に興味を持っていただけた方は、是非、ご応募を検討ください。