しまチャレ 2024 ながさき「しま」のビジネスチャレンジ2024

ュース(記事)

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2024.10.01

第3回トークセッションイベント実施レポート

皆さんこんにちは!しまチャレ2024事務局です。
去る9月14日(土)に、しまチャレ2024のプレイベントの第3回を開催しました!
「『しま』の自然を活かした仕事づくり」をテーマに、対馬市でつしま焙煎所店主をされている岩間雄平さん、新上五島町で株式会社やがため代表取締役をされている川口秀太さんのお二人をゲストとしてお招きし、ファシリテーターの(一社)離島総合研究所代表理事 上田嘉通が、島での仕事、暮らしの様子を伺いました。

対馬が良すぎて、陸上自衛官からカフェ店主へ。
岩間雄平さんの移住ストーリー

岩間さんは、福島県いわき市出身で、18歳で仙台市の陸上自衛隊に入隊。結婚し子どもができたタイミングでの赴任先が対馬でした。対馬への転勤はご本人の希望だったようで、もともと島で子育てをしたいという夢があり、対馬に行ける機会があるとのことで希望したそうです。当初、島に本格的に移住するのは定年してからと思っていたようですが、ご本人曰く「対馬の人・食・自然が良すぎた」とのこと。14年半務めた陸上自衛隊を退職して対馬でカフェをはじめることになります。

現在は、人口100人未満の久和(くわ)という集落でカフェを営業されている岩間さん。対馬の中でもさらに田舎だという久和集落は、山々に囲まれ、道は入り組んでおり、島民にとっても「遠くて不便」というイメージで、なかなか足を運ばない集落だそうです。
「久和集落は、里山があって海があって、コンパクトにした対馬のようだと思っています。そんな久和集落を好きになって移住したのですが、住んでさらに好きになりました。」
と岩間さんは久和集落への愛を語ってくださいました。

「ないもの」の掛け合わせで唯一無二をつくる

岩間さんは事業を始めるときに、対馬にないものを売ろうと考えたそうです。
そのような視点で考えた時に、対馬には珈琲を自家焙煎するお店、オーガニックのコーヒー豆を扱う専門店、古民家カフェ、子ども連れでゆっくりできる飲食店、天然醸造の調味料や自然食を提供する身体にやさしいカフェがなく、それらを対馬の自然が叶えてくれたと岩間さんは話します。

また、ライフスタイルでは、半自給自足の生活をしたいそうで、山も海もあるこの場所なら、畑もできるし、山に行って狩猟もできて、海に行って漁もできる。これも、対馬の自然があるからこそできること、と嬉しそうに話してくれました。

現在は、人が来ない集落だからこそ来る理由をつくろうと、岩間さんはさまざまな取組に挑戦中です。「カフェピラティス」を行ったり、転勤族の奥さんが集まる会「カフェ友」、地元の高校生徒との商品開発、コーヒーのワークショップなどを行っていて、今後は映画の上映会、味噌づくりワークショップなども開催予定だそうです。

この島にいるから生み出せるものがある。
川口秀太さんの継業ストーリー

新上五島町出身で、高校、大学と島を離れたものの、大学卒業とともに上五島に戻り家業を手伝っていた川口さん。当時は、塩づくりをはじめ、材木屋もしており、川口さんは材木屋の事業を手伝っていたそうです。たまたま、祖父がやっていた塩づくりを手伝う機会があったそうで、その時にものづくりの楽しさに魅了され、塩づくりの仕事が徐々に増えていったそうです。

そんなとき、近くにある矢堅目の展望所に観光バスが寄るようになったそうです。バス会社の方から、少し時間があるので塩工場を見学できませんかと相談され、祖父と二人で塩づくりの説明をし、塩とにがりの販売をしてみたところ、とても売れたとのことです。それがきっかけで店舗をはじめるようになりました。自分たちが汗水たらして作った商品が目の前で売れていくことに喜びを感じ、自分のやりたいことはこういうことなんじゃないかと思い、事業を継いでいく気持ちが固まっていったそうです。

現在では、塩工場の目の前の海から満潮時に入ってくる海水を汲み上げ、逆浸透膜で濾過した後、2週間かけて薪炊きで塩を作っています。お菓子の原料として出荷する塩、飲食店(和食、中華、フレンチなど)に出荷する塩などを用途に応じて作り分けており、お客様に求められる塩づくりを心掛けているとおっしゃっていました。
従業員と共有している経営理念は「この島にいるから生み出せるものがある」だそうです。

ここに人が来る理由をつくる

川口さんは、塩づくりの他に、お土産品の販売、ツアーの受入れ等もしています。塩づくりの行程を見学し、店舗で休憩しながら商品を見てもらう流れを作っています。店舗をはじめたのは平成18年。やがためがある場所は行き止まりで、通過点にはならないため、どうやって来てもらうかを考えていたそうです。観光客はもちろん、地元の人にも来てもらいたいと始めたのが塩ソフトクリームでした。当時は、島内にソフトクリームを食べられるお店がなかったために、塩とにがりを混ぜてソフトクリームを開発したのが店舗を始めるきっかけとなったそうです。現在は、年間2万人弱の来場者がいるとのことです。

これからの島に求められる起業

これから起業される場合、どのような業種であれば島の人に歓迎されるか、お二人に伺ってみました。
岩間さんからは、若い人が島を離れて慢性的な人手不足になっている事業者が多いので、そこを補えるような人材派遣の仕組み、サービスがあると良いのではとのコメントをいただきました。
川口さんからは、島の物を販売できるサービスがあると良いのではとのことでした。島の人は、商品をつくることにはこだわりを持つ一方、それを販売するのが得意ではない方もいるので、島の人が苦手な部分を補ってくれるようなサービスがあると良いとおっしゃっていました。

島で理想の暮らしをすることを、子どもにどう見せていくのか

ご自身のやられている仕事のこと、暮らしのことを、お二人は自身の子どもたちにどのように伝えているのでしょうか。

岩間さんは、背中で見せることを大切にされています。
陸上自衛隊の頃は休みが決まっていたので、子どもと過ごすことができていたそうですが、自分で商売を始めると休みがなかなか取れなくなり、子どもと過ごす時間が減ったそうです。どのように子どもを向き合うか悩みながらも、自分で決めたことをやる親の背中を見せていくことを大切にしているそうです。

川口さんも、仕事ばかりで出張も多く、子どもと接する時間を十分取れたかと言われると悩ましいそうですが、そんな中でも子どもはしっかり親の背中を見ていて、何も言わなくても伝わるものがあると感じているそうです。
何も言わなくても子どもが動いてくれて、それに親が感動してしまうのだとか。

「しま」でチャレンジをしたいときの最初の一歩

しまチャレに応募を検討されている方が、島に関わっていきたいと思ったとき、まず何からすればいいのでしょうか。お二人に伺いました。

岩間さんは「挨拶」だそうです。
新しい人が来る、新しいことを始めるような場合、島の方は警戒すると思うとのこと。ただし、周りの方の理解がないと上手くいかないため、挨拶はコミュニケーションの基本でもあり、そこから相手の懐に入る入り口にもなるそうです。

川口さんは、「まずは来て欲しい」とおっしゃっていました。
島の外から人が来ることで、コミュニティとしても経済としても活性化すると思うので、まずは来て欲しいそうです。田舎だからハンデがあるんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんし、もちろんハンデはゼロではないですが、意外と大丈夫なので、是非来て欲しいというメッセージをいただきました。

島の自然を生かして唯一無二を作り出す

岩間さん、川口さんのお話を伺い、2人の共通点は「ここでしかできないことをしている点」だと感じました。

「ここでしかできないこと」をどのようにつくるか。そのアプローチは様々ですが、岩間さんは、島の資源を活かしながら、島に無いものの掛け合わせをすることで、唯一無二の存在のカフェをつくっていますし、川口さんは、工場の目の前の海から満潮時の海水を汲み、薪炊きでつくる製法にこだわりを持つとともに、塩ソフトクリームのような、そこに行かないと食べられない動機づくりも上手にされており、唯一無二の存在となっています。

そこに行かないと見えないもの・得られないものなどを、どのように組み合わせるとビジネスとして魅力的になるのか、是非、みなさんも考えてみてください。