「しま」のいま
佐世保市(宇久島、寺島、高島、黒島)編
国立公園、世界遺産、離島留学…特色が異なる4島
■本土に近い島と五島列島最北端の島
長崎県北部に位置する佐世保市は、約23万人の人口を有する県内第2の都市で、軍港の歴史やテーマパーク、そして、自然景観が美しい西海国立公園九十九島といった観光資源に恵まれたまちです。この佐世保市には有人離島が4島あり、人口の約1%が離島で暮らしています。
本土に近接する高島(人口約140人)、黒島(人口約300人)、佐世保港から約60km五島列島最北端に位置する宇久島・寺島(人口約1,600人)と同じ市内の離島であっても、それぞれに多彩な特色があります。
■高島は西海国立公園九十九島の一つで元気な有人島を目指す
高島は、本土から約7kmの位置にあり、フェリーで20分と最も本土に近い離島で、いか釣り、ごち網、採介藻漁業などの沿岸漁業、「九十九島かき」の貝類養殖、ちくわ製造など水産業が盛んです。

西海国立公園九十九島の一つとあって自然景観は素晴らしく、特に、佐世保市が認定する九十九島絶景ポイント「九十九島八景」の一つとなっている、高島で一番標高が高い「高島番岳」からは、平戸や五島列島を近くに望むことができるほか、八景の中で唯一、九十九島からの朝日を見ることができます。
また、この高島番岳には、太平洋戦争中は、高射砲台が設置されていたという歴史もあります。
2023年に、「数十年後も明るい未来の共有ができる、元気な有人島として存続させる!」ことを目指して、地域運営組織「一般社団法人高島活性化コンペンション協会ESPO」が地域住民を中心に設立。産業活性・教育・観光創造・インフラ推進・環境の5つの柱を立てて、休眠預金活用事業等を活用し、漁業等の体験型観光コンテンツの開発、教育や産業の強化、大学と連携した海岸保全活動、島内外の子どもたちを中心としたアートプロジェクトなど、元気な有人島を目指した取り組みが展開されています。
■黒島は世界遺産を軸にした観光地域づくり

黒島天主堂(画像:佐世保市提供)
本土から約12km、フェリーで50分の黒島ではもともと、農業と漁業が主な産業でしたが、1998年に黒島天主堂が国重要文化財に指定され、そして、2018年には「黒島の集落」が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に登録されることを契機に、観光業に力を入れています。

黒島のウェルカムハウス(画像:佐世保市提供)
例えば、2016年に港の近くにウェルカムハウス(観光案内所・直売所)がオープンし、2021年には、島内移動手段の一つとして「グリーンスローモビリティ」の導入が行われるなど、観光客の受入体制の充実が進められてきました。
黒島観光協会では、2022~2024年度にかけて佐世保市・西海市・平戸市・川棚町の4市町に点在する鎮守府を効率的に周遊する観光プログラムに参画し、2023年度には黒島歴史散策ガストロノミーツーリズムテストツアーを実施するなど、魅力ある観光コンテンツづくりに取り組んでいます。
このように観光による地域づくりが進められていますが、島内に公共交通機関がないという課題を抱えています。そこで黒島では、公共交通空白地域に対する新たなモビリティ実証「黒島公共ライドシェア実証実験」が予定されており、新たな交通インフラとして期待されています。
■宇久島では創業・事業拡大の増加と高校への離島留学制度導入

本土から約60㎞、フェリーで約3時間半掛かる国境離島、五島列島最北端に位置する宇久島(寺島を含む)。一本釣漁や延縄漁を中心とする漁業が盛んで、イサキやレンコダイ(マダイより体色が黄色に近いタイ)、イカ類などが水揚げされます。また、約60戸の畜産農家が、高級ブランドの素になる黒毛和牛の子牛の生産に携わっており、最近では宇久島にUターンし、畜産農家となる若手が増えている状況です。
2025年春に、光回線サービスの提供が始まり、各家庭での通信における利便性が向上しました。島内にコンビニはないものの、スーパーや学校、医療施設、金融機関など生活に必要なものは揃っており、ミニマムな暮らしができます。
ビジネス面では、「雇用機会拡充事業」を活用し、過去9年間で約20件の創業・事業拡大の実績があります。例えば、移動販売事業や自然共生型サウナ施設の開業など、多様な事例が生まれています。
2026年度からは、「長崎県立宇久高校の離島留学」が始まります。生徒数の減少が進む宇久高校において、「Ukuサイエンスパーク」と銘打ち、現行の普通科課程の中で、探究型学習を充実させ、企業、大学、行政、地元関係機関と連携する自然科学分野を柱とした、課題解決型の教育が行われます。島外から入学する生徒は、宇久島でホームステイをして高校生活を送ります。

対馬瀬灯台(画像:佐世保市提供)
さらに、移住者や関係人口を増やしていくために、「宇久町公式ホームページ宇久島」の開設、移住PR動画の作成、全国の島の交流イベント「アイランダー」での宣伝など、さまざまな取り組みを実施。島民をホスト、島外からの来訪者をゲストとする、ホストファミリー制度の整備も進められています。
■各島の課題を解決するアイデアを期待!
離島共通して、少子高齢化による担い手不足、緊急医療体制の確保が課題となっています。ほかにもイノシシが農作物を荒らす獣害が問題に。宇久島では船の運賃における燃油サーチャージの高騰が続き、海上交通や医療福祉に影響を与えています。
しまチャレでは、佐世保市の離島の課題を解決し、交流人口や関係人口の増加につながるようなアイデアが期待されています!
■佐世保市の「しま」のビジネスに関する問い合わせ窓口
【高島・黒島】
佐世保市役所 地域政策課、商工労働課
【宇久島・寺島】
佐世保市宇久行政センター産業建設課、お仕事情報プラザ、宇久町商工会、長崎県新規就農センター、県北地域新規就農センター、ながさき漁業伝達所
記事公開日:2025/8/19
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