「しま」のいま
北松浦郡小値賀町編
悩める高齢経営者と、島に寄り添う起業家たち
■豊かな自然と文化が息づく小値賀町
五島列島の北部に位置する小値賀町は、約2000人が暮らす小値賀島を中心に17の島から構成されています。小値賀島のほかのおもな島は、小値賀島と橋でつながった斑島(まだらじま)・黒島、航路で結ばれた野崎島・六島(むしま)・納島(のうしま)・大島。各島では漁業や農業、畜産業、観光業が営まれ、それぞれの島が異なる表情と魅力をもっています。

ワーケーションスペースの古民家「鮑集」
例えば、人口が最も多い小値賀島では、豊かな漁場を活かした漁業や、メロンやスイカなどを栽培する農業、和牛を育てる畜産業が盛ん。島内には古民家を活用した宿泊施設が7棟整備され、ワーキングスペースとしても利用できるため、ワーケーションやビジネス展開の拠点としても注目を集めています。

旧野首教会(野崎島)
いっぽうで、野崎島の人口はわずか1名(野崎島自然学塾村の管理者のみ)。世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつ「野崎島の集落跡」を有することで、野崎島はよく知られます。今年11月頃には旧野首教会の修復工事が完了予定。島内ではグリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走行可能な電動車を活用した移動サービス)の導入に向けた実証試験を行う予定であり、島内移動や観光への活用に期待されています。
ほかにも、納島はメロンの一大生産地として島外の研究者に注目されるなど、それぞれの島に異なる魅力と特徴があります。
■「静かに」廃業していく経営者たち
小値賀町は、長崎県で2番目に人口の多い佐世保市とつながりが強いこともあり、物流におけるコストや輸送時間は比較的抑えられています。また、小値賀町の島々では古くから物々交換の文化が根付いており、地元の生産者同士が野菜や米などを分け合う暮らしが今も続いています。この伝統を守るためにも、農家の減少に歯止めをかける地域の取り組みが重要です。
豊かな自然と文化が育まれてきた小値賀町ですが、少子高齢化による「担い手不足」という深刻な問題に直面しています。多くの経営者が70代以上となり、事業継続が困難に。過去1~2年間で、小値賀町内の宿や商店、飲食店などが閉店しました。とくに心配なのが、店主が十分に相談しないまま、静かに廃業してしまう状況が増えていることです。小値賀町では、事業承継に関する島外の人材とのマッチングや、セミナー開催などに取り組んでいるものの、相談するまでに廃業に至るケースが目立っているのです。事業を営む経営者に寄り添い、廃業を未然に防ぐ取り組みが、小値賀町では求められています。
また、医師や歯科医師も高齢化の影響を受けており、町の医療体制は十分とは言えません。近年では小値賀町への子育て世帯の移住が進むなか、小値賀町内に産婦人科が存在しないことが大きな課題になっています。妊婦健診や産後検診では、佐世保までフェリーで約3時間(高速船で約1.5時間)かけて通院することになるのです。この問題は産婦人科に限らず、人工透析が必要な場合など、島外で診療や治療が必要となる住民は少なくありません。
■島の声に耳を傾け、暮らしを支える起業
移住に関連して、小値賀町では空き家の活用相談会、島留学、移住者交流会、地域おこし協力隊の広域的な募集、インターンの活用など、定住や移住の促進に向けたさまざまな取り組みを推進。町全体で外から来る人々を支える体制が整備されています。こうした取り組みの成果として、地域おこし協力隊の任期を終えた後、小値賀町でパン屋やキッチンカーなどの事業を開業する事例(国境離島交付金雇用拡充を利用)が増えています。
2024年には、小値賀町に移住し活動をしてきた保育士による初のベビーシッター事業がスタート。ファミリー層の移住が進むなか、子育て支援の体制が新たな暮らしの安心につながっています。
小値賀町の住民は、最初の一歩を踏み出すのが得意ではないものの、実は新しいチャレンジを心待ちにしているとのこと。「住みたい」「帰りたい」「関わりたい」「働きたい」といった、さまざまな想いで小値賀町とつながり、小値賀町の未来を一緒に描いていく、しまチャレ挑戦者をお待ちしています!
■小値賀町の「しま」のビジネスに関する問い合わせ窓口
産業振興課商工観光係
記事公開日:2025/8/8
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