「しま」のいま
平戸市(大島、度島、高島)編
水道や燃油、インフラ面の課題に直面する3島
■島ごとに異なる水道の事情
長崎県北西部に位置する平戸市には、人口約2万9000人のうち、約1400人が離島である大島と度島(たくしま)、高島で暮らしています。平戸市の中心である平戸島の北側には大島と度島、南端近くに高島が浮かんでいます。
いずれの離島も農業と漁業を基幹産業とし、少子高齢化とインフラ面の課題に直面。さらに、海の環境変化による磯焼けや魚の価格低下により、漁業を営む人々の収入が減っています。
まず、3島に共通するインフラ面の課題として、水の安定供給が挙げられます。3島で唯一、独立した水道施設を有しているのが大島です。ただし、大島は起伏が大きいという地形上の制約があるため、水道施設の維持管理に多額の経費が必要となり、水道事業の経営を圧迫しています。
度島は水道水源がなく、平戸島から海底送水管により給水しています。島内の水道送水管や配水管の一部については老朽化した配管から漏水が多く、有収率(効率よく水を家庭に届けられているかを表す指標)が伸び悩んでいます。
高島には井戸水浄水施設しかなく、井戸水が枯渇した場合は飲料水の安定的な供給が危惧されています。高島と度島では、海水の淡水化施設を整備したこともありましたが、水質などの問題から現在は稼働していません。
■海上輸送コスト高騰とガソリンスタンド不足
さらに島ごとの状況を見ていきますと、大島と度島においては、島内でとれた魚や農産物を本土に送るためにかかる、海上輸送コストの高騰に直面しています。この状況は漁業の経営に悪影響を与え、水産業の衰退につながりかねません。航路を利用しなければならないことや島内での公共交通機関が充実していないことなどから、観光誘致においても懸念材料となっているのが現状です。
現在、大島では各商店に食料品などの商品を卸売する業者がいないため、商店が直接買い付けに行っている状況であり、商品などを仕入れることが困難な状況になっています。
続いて度島では、ガソリンスタンドを含む給油施設が存在しないという課題があります。このため高齢の住民が携行缶(ガソリンを持ち運ぶための容器)にガソリンを入れて、車に給油するしかありません。幸い今のところ大きな問題にはなっていませんが、高齢の住民にとって、危険がともなう状況です。
高島では住民の大半が水産業に従事していますが、定期船がないため平戸市が委託する船でアクセスを確保。児童はスクールボートで平戸島に通学しています。島内に医師はいないため、急病時の対応への不安も大きな課題です。
■島民主体による新たな活動に注目!
さまざまな課題を抱えている平戸市ですが、課題を克服するために新たな動きも出ています。例えば、住民主体で地域課題の解決や地域コミュニティの活性化を図る「まちづくり運営協議会」が小学校区ごとに設置され、現在は14の協議会が活動しています。

神浦の町並み
実際に大島と度島では、まちづくり運営協議会を中心として、協働により地域の課題解決を図っています。床屋がないという現状に合わせて島に理容師を招いたり、農業用の肥料をまとめて買ったりするような、島民の生活の維持に不可欠な活動が中心です。
また、大島では国指定の伝統的建造物群保存地区に指定されている神浦(こうのうら)地区において、伝統的建造物群保存地区交流拠点施設にWifi環境などを完備したコワーキングスペースが整備されました。将来的にはサテライトオフィスやワーケーション拠点としての活用が期待され、すでに企業による利用実績もあります。
さらに大島では、花粉がほとんど飛散しない「避粉地」としての地域性に活かし、避粉地ツアーを開催してきた実績があります。運営人材の確保が困難となり、避粉地ツアーは現在休止中ですが、避粉地の活用は今後も可能性を秘めています。
平戸市の離島では、課題が多岐にわたり、人的資源の不足などにより整理が追いついていない状況です。こうした状況のなかでも平戸市では「住み続けられる島づくり」を目指し、環境整備や生活維持の努力が続けられています。現状を踏まえ、平戸市の離島を活性化していくビジネスアイデアを、ぜひお待ちしています!
■平戸市の「しま」のビジネスに関する問い合わせ窓口
平戸市役所 商工物産課、企画課
記事公開日:2025/8/29
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