しまチャレ 2024 ながさき「しま」のビジネスチャレンジ2024

輩インタビュー

輩インタビュー

しまの先輩ノート No.7

壱岐市(壱岐島)
ISLAND BREWERY(原田酒造有限会社)
原田知征さん

島歴41年(Uターン) 飲食業

日本一魚に合うビールをコンセプトにした壱岐島の「ISLAND BREWERY」。2021年に立ち上げられた、長崎県で初めてクラフトビール醸造所でもあります。事業を立ち上げた原田知征さんは、酒蔵の5代目として壱岐島で生まれ育ち、焼酎一筋の道を歩まれていました。そんな原田さんがクラフトビールの製造に携わった背景と、地域活性化への思いを伺いました。

いろいろ聞きました

起業までの経歴を教えてください

私は明治から続く酒蔵の5代目として、壱岐島で高校までを過ごしました。高校卒業後は島を出て、家業を継ぐために東京農業大学醸造学科で醸造学を学び、卒業後にはアルバイトしていた飲食店の社員となり、新店舗のオープンにマネージャーや店長として数店舗携わり、経営の基礎を学びました。
大学と就職で学んだことを島に持ち帰り、共同経営していた焼酎製造会社に入社。そこでは焼酎の製造を担当し、「花酵母」という酵母を使った日本初の焼酎や、新商品の開発に携わり、市場に送り出してきました。
この会社では3年間は社長を務めていましたが、経営方針やものづくりに対する考え方の違いから、改めて独立を決意するに至りました。

島で起業することになった経緯はなんですか?

家業が明治より続く日本酒と焼酎を造る酒蔵だったため、島に帰り、家業を継ぐことは高校時代より決めていました。
帰島後に入社した会社では、焼酎の製造に携わり17年。独立するにあたって、自分のやりたいことができる会社を作ろうと、元々製造を行っていた原田酒造を業種転換しクラフトビールを造り始めました。
自分が焼酎造りから離れることは想像もしていませんでしたが、なぜ焼酎ではなくクラフトビールだったのかには理由があります。焼酎から離れたのは、壱岐島にはすでに7蔵の焼酎メーカーがあったから。クラフトビールを選んだ理由は、壱岐島は夏の観光の多い島になるので、クラフトビールがあればもっとお客さんに喜んでもらえると思ったから。また、長崎県は47都道府県で唯一クラフトビール醸造所のない県だったからです。
このような戦略上の理由もある反面、クラフトビールは初期投資が大きく、儲かりにくい事業であることも、ずっと醸造業界にいたので知っていました。それでも大好きなものづくりができ、地元の特産品を副原料として使えるクラフトビール造りは、私にとって最大の地域貢献になると思い、クラフトビールの製造をセカンドステージとすることに決めました。

起業にあたり苦労したこと、これをしてよかったと思うことを教えてください

起業にあたり一番苦労したことは、父の説得です。父は私の独立には賛成でしたが、ビールを造ることには大反対でした。
父はずっと焼酎を作り続けていた昔ながらの職人です。また、第一次地ビールブームの時、たくさんの地ビール醸造所ができ、衰退していくのを見ていました。
このこともあり、最初は実家(酒蔵)でない場所で、建屋を借りて製造しようと考えていましたが、紆余曲折あり、最後は実家を改修して醸造所を作ることになりました。しかし、準備期間に亡くなった父をちゃんと納得するまで説得することはできませんでした。
もう一つの苦労は、醸造技術の習得です。
当初の予定では、開業準備ができたら半年ほどアメリカで修行する予定でしたが、コロナの影響で渡航できなくなり、技術を持ったブルワーを募集しても、島に移住してまで造ろうとしてくれる人は現れずで、一時は途方に暮れていました。
そんな中、醸造会社を経営されている方との運命の出会いがあり、技術指導してもらえることになりました。その方のお陰で、今の味をつくり出すことができています。
実家を改修して起業したことで町の活性化にも繋がり、地域の方に喜んでいただけています。紆余曲折もありますが、苦労は結果的によかったことに結びついています。

先輩起業者として、応募者にひと言お願いします!

私はそもそも壱岐島生まれだったので、独立を決めた時から生まれ育った町に恩返しできるような事業をしようと考えました。
壱岐島にあったらいいもの。自分の持った技術で、地域貢献できる事業を考えた時、それがクラフトビールでした。
土地勘がない状態で、移住して起業するというのは、これよりワンランク上の大変さがあると思いますが、その分やりがいもあることだと思います。

島には独特の価値観があるので移住となると違和感を感じることは多々あると思いますし、それが自分にフィットするかと判断することも重要です。
まずは、自分にその島が合っているのか、地域の人と打ち解けてコミュニティーが作れるか、商材は島民向けなのか観光客向けなのかなどをしっかり検討することが大切だと思います。

原田さんの会社の

事業概要

ISLAND BREWERYでは「魚に合うビール」をコンセプトにビールづくりを行っています。
今までビールはお刺し身やお寿司に食べ合わせとして合わないと言われていましたが、壱岐島は美味しい海の幸がたくさん取れる島になるので、あえてそこにチャレンジしました。
また、イカ釣り漁船の放電灯をモチーフにしたロゴマークに込めた想いのように、町に明かりを灯し、人の集まる場所にすることを使命としています。
  • 会社名
    ISLAND BREWERY(原田酒造有限会社)
  • 屋号
    ISLAND BREWERY(アイランドブルワリー)
  • 設立
    昭和30年
    (ビール事業は令和3年より)
  • 資本金
    300万円
  • 従業員
    7名(アルバイト4名含む)
  • 所在地
    長崎県壱岐市勝本町勝本浦249番地
  • 所属
    ・壱岐市商工会
    ・壱岐市法人会
  • 主な事業
    ・クラフトビールの製造・販売
    ・タップルームの運営

原田さんが利用した
支援制度

壱岐市雇用機会拡充事業補助金(令和3年度)

壱岐市雇用機会拡充事業補助金(令和2年度)

ものづくり補助金(令和2年度)

advise たくさんの補助金があるので、まずは自分で調べて、自社に使えるかどうか検討し、わからなければ商工会等のサポート機関に相談することです。
補助金の申請書を書くのは大変ですが、要項の中に加点されるポイントなどが書いてあるので、めんどくさいですがしっかりと読み込み、それを申請書に落とし込むことが重要です。
本当に大変な作業になるので、やはり一番重要なことは「なぜそれをやるのか」と「本人のやる気」だと思います。